年末年始に読んだ本

調べてみると,一年以上も読書カテゴリの日記をつけていなかったようだ。その間,本を読んでいなかったかというと,そんなことはなく,けっこう読んだと思う。30冊くらいは読んだのではないかな。ただ,読書日記をつけたものは数冊しかなく,ほとんどが読みっぱなしなので,あまり役にはたたない読書が多かった。せめて,はてなに簡単な感想でもつけておくべきだったと反省している。
というわけで,この年末年始に読んだ本を列挙して,ちょっとした感想を書いておこうと思う。

生物と無生物のあいだ

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

今年の科学をテーマにした新書では随一のものとのことで読んでみた。生物学よりの話はちょっと難しいが,ところどころにある著者の留学時代のエピソードが面白い。実はまだ読み終わってないので(あと数十ページ),読み終わったらもっとしっかりと感想を書きたいところ。

スーパーコンピューターを20万円で創る

スーパーコンピューターを20万円で創る (集英社新書)

スーパーコンピューターを20万円で創る (集英社新書)

このタイトルを見ただけでどのマシンか検討をつけるのは,コンピュータアーキテクチャを勉強したものにはそう難しくはない。そのマシンというのは1989年に東大で開発された重力多体問題の専用計算機,GRAPE-1のことである。ちゃんとしたコンピュータの設計をしたかった人間としては,この本は純粋には楽しめなかった。このようなプロジェクトに携わることができた著者が羨ましいと思うし,自分が大学時代にたいしたことはなにもできなかったことが恥ずかしくなってくる。この本についてもちゃんと書きたいな。

“環境問題のウソ”のウソ

“環境問題のウソ”のウソ

“環境問題のウソ”のウソ

トンデモ本の批評などで有名な,と学会の会長である山本弘氏がベストセラー“環境問題のウソ”を検証した本。“環境問題のウソ”を読んで多いに関心させられた人間としては,何とも刺激的な内容であった。環境保護を錦の御旗のごとく扱うことに疑問を持っていたので,“環境問題のウソ”は出てすぐに買った記憶がある。基本的に単純なので,読んであっさりと信じてしまったように思う。ただ,今でもペットボトルはしっかりキャップとラベルを剥がして処分しているのでリサイクルについてはあまり信じてなかったのかもしれない。こういうときしっかりと読書ノートをつけておけば,“環境問題のウソ”をどういうふうに読んだからいくらかわかるのだが。とりあえず,批判的な目を持って本を読むという姿勢を忘れてはいけないな。

時間はどこで生まれるか

時間はどこで生まれるのか (集英社新書)

時間はどこで生まれるのか (集英社新書)

何もしなくても時間は過ぎ,過ぎ去った時間はもとには戻らないという現実にリアルにへこむことが多い今日この頃。時間の無常さをひしひしと感じていればこんな本も読みたくなります。前半は相対性理論量子論から得られる科学的な説明,後半は著者の考える時間論に関する論考である。前半は良く出来た科学啓蒙書なのだが,後半は著者独自のアイデアが強すぎてSFという感じ。素人目にも著者の時間論には論理の飛躍や暗黙の仮定がある気がするし。「生命こそは秩序そのもの」というのは本当なのかしらん。

「理系」という生き方 理系白書

「理系」という生き方 理系白書2 (講談社文庫)

「理系」という生き方 理系白書2 (講談社文庫)

毎日新聞の連載記事,理系白書の第二弾である。理系白書の第一弾は3回読んだ。最初は新聞で読み,単行本で2回読んだ(文庫では読んでない)。第二弾は教育に重点がおかれているようだ。5章中2章が教育についてである。第一章の「文理分け教育」は自分自身が理数科だったこともあり,また,文転したこともあるため興味深く読んだ。個人的には高校で文理をわける必要なないと思っている。また,大学で転部や転科をしやすくしてほしい。日本の大学って総合大学のメリットを生かせてない気がするのは私だけではないだろう*1
最近,ちょい落ち目と言われる毎日新聞だがこの連載はがんばってほしいなあ。

大人のための数学教室 アホでも数学者になれる法

アホでも数学者になれる法―大人のための数学教室

アホでも数学者になれる法―大人のための数学教室

清流出版なので自費出版なのかな?
タイトルは数学教室とあるが,数学自体の話はほとんどなく,著者が日々思っていることをそのまま本にしたという感じ。どうやら元はウェブページに書いたことらしい。そのためか,本の前半と後半では文体が違う。また,同じようなことが二回,三回と書かれていることがある。他にもまとまってないと思われる箇所が散見される。書いてあること自体には面白いところもあるのに,本としての体裁が整っていないため,もったいない感じ。新たな所得源とするために本を書いているならもう少し手をかけてよ・・・。今までけっこう本を読んできたがこの手の本は初めてだ。というか本というより本と同じ形をした何かに近いかもしれない。
体裁はともかくとして,内容自体にはハッとさせられること,興味深いことも結構ある。というか,7年半勤めた会社を脱サラして数学の研究者になるなんていう希有な人が書いたものというだけでそれなりの価値があるとオレは思う。あとはもっと上手くまとめてくれれば,それなりに売れるんじゃないのだろうか。とりあえず,文体を統一し,意味のある章分けをし,話題の飛躍を減らす,それだけ(だけ??)でだいぶ変わるのでは?

*1:運営面では生かせてるのかもしれないが