いいたかないけど数学者なのだ

いいたかないけど数学者なのだ (生活人新書)

いいたかないけど数学者なのだ (生活人新書)

代数幾何学の世界的な研究者である飯高茂氏の著作をまとめたような本。内容的にあまり統一感はない。最近、こういう本が増えた気がする。特に新書で。
この本の価値は、まえがきにも書かれているとおり、第2章の「S君の読書ノート」にある。S君とは数学者の故新谷卓郎氏のこと。私も「S君の読書ノート」があったのでこの本を買った。なんか飯高氏には申し訳ない気がするが、その通りなのだからしかたがない。
S君の読書ノートを読むと(私がS君と呼ぶいわれはないがS君で通そう)、S君ほどの人でも学生時代に学業のことで悩んでいたことが分かる。数学書を読もうと思っているのに、つい三国志などS君が言うところの悪書を読んでしまったり、同級生の優秀さに嫉妬し自身の能力を疑ったり、勉学とは関係ない新聞や雑誌を読む時間を減らしたいのにそういうことができなかったり、である。どれも自分が学生時代(今もだが)に悩んだことである。おそらく多くの人も同じ悩みを持ったことがあるのであろう。その他の悩みに関してもほとんど思い当たる節がある。まったくなかったと言い切れるのは進学振り分けくらいだ。非常に残念だ。
しかし、同じような悩みをもっているからといって将来的にS君のような超一流になれるわけではない。そもそも一流の人は基準が違う。S君は手塚マンガに4時間費やした自分にあきれているが、私は今年の夏休み、一本のゲームに150時間費やしたし、卒論真っ只中の今にケロロ軍曹を再読している。これだけでスケールの違いが分かるというものだ。ただ、天才と呼ばれる人が自分と同じような悩みをもっていたことを知って、少しは楽な気分で勉強ができるようになると思う。