技術空洞

技術空洞 Lost Technical Capabilities (光文社ペーパーバックス)

技術空洞 Lost Technical Capabilities (光文社ペーパーバックス)

友人がソニーから内定をもらったと聞いたとき、「すげーなあ」とか「オレだって受ければもらえたさはずさ!」とかは思ったのだが、うらやましいとは思わなかった。その理由は今のソニーの製品開発力、技術力がどう考えても高いとは言えない気がしたからである。もちろん、ワタシがもともとアンチソニーだと言うこともあるだろうが。
ソニーはもともと故障が多いと言われているが、最近のウォークマンA、PSPなどの話を聞くとどうも故障以前の問題である気がしてならない。さらに、ロボット事業撤退、クオリア撤退、木原研究所と中村研究所の閉鎖というのは、ソニーの技術に対するこだわりや遊び心が失われているように思えるのだ。このような思いを持つ人はワタシだけではないであろう。
もともとそんな考えを持っているなかで、こんな本を読んでしまったため、ワタシのソニーに対する不信はいよいよ本格的なものになってきた。まさか、プロジェクトXにも取り上げられたAIBOにあんな後日談があったなんて。実力主義、学歴不問のイメージが強い会社だと思ってたら・・・
ちなみにこの本ではソニーの技術系採用は学校推薦中心と書かれているが、今年は自由応募のみで学校推薦は一切ない(はず)。大手電機の技術系は基本的に学校推薦で自由応募で入るのは非常に大変である。自由応募では無理なところだってある。そういう中でソニーの自由応募のみという新卒採用がどう獲得人材の性質に影響を与えるかは興味がある。
ところで、この本は光文社ペーパーバックスとして出版されているのだが、この光文社ペーパーバックスと言うのがワタシは好きになれない。まず、紙が安いしラパーがない。まあ百歩譲ってこれらは良いとしても、英語混じり「4重表記」はどうかと思う。4重表記と言うのは日本語の、ひらがな、カタカナ、漢字に英語をそのまま取り入れたもので、光文社曰く「日本語表記の未来型」とのこと。なんかこれだけ読むと、例えばアイデンティティーをカタカナ英語ではなくidentityと書いてあるように思えるが実際は違くて、ただ単に脈絡もなく日本語の単語にそれに対する英単語(たまにフレーズ)が載ってるだけである。実際に引用してみる。

問題はそのプロジェクトの前提となる「全国のユーザの所有商品をデータベース化する」という発想 idea そのものにあった。

これはこの本の217ページに書かれているのだが、その前語を読んでもなぜ発想にはideaという英単語がふられているのかがわからない。問題にproblemとか、前提にassumptionとかはあってはいけないのだろうか。さらに、この英語の部分は本文と同じ色、大きさで書かれているため非常に読みづらい。「発想 idea そのものにあった」ならまあ分からなくもないけど「営業利益 operational profit では」とかになるとワタシ程度の能力ではスムースに読めなくなってしまう時がある。せめて英語の部分は括弧でくくるとか、日本語の下に書くとかして欲しい。こんなんじゃ光文社自身についての本が出るのもそう遠くないと思ってしまうのだが。他の人は特に4重表記に対して文句ないのかなあ。